自治体・通信事業者に頼らないブロードバンド整備技術の研究開発

自治体においては,ブロードバンドの整備を喫緊の課題としながらも,財政 的に厳しい状況下では費用の拠出は困難である.通信事業者は採算が取れな い条件不利地域へのブロードバンド整備を行わない.自治体や通信事業者以 外にブロードバンド整備を担うことができるのは住民しかいない.光ファイ バの敷設は住民レベルでは困難だが,専用回線や衛星インターネット用設備 を用いたブロードバンド化であれば,現在でも地域の住民が協力して費用を 負担することで十分に実現可能であると考えられる.そこで本研究では,鹿 児島県内の条件不利地域を実証のためのフィールドとして,これまで行われ ていない住民負担によるブロードバンド(=コミュニティ・ブロードバンド) の整備のための技術開発を行うことにした.これにより,地域住民が低コ ストでブロードバンドを整備できるようになり,ブロードバンドゼロ地域の 早期の解消が可能になると考えている.

本研究では,コミュニティ・ブロードバンドをインターネット接続部と地域 内ネットワーク部の2つに分けてそれぞれの研究開発を行うとともに,コミュ ニティ・ブロードバンドを利用した地域内IP電話網に関する研究開発を行う. このため,以下の3つのサブテーマを設けた.

  • A. 条件不利地域におけるインターネット接続の共用技術の研究開発
  • B. 無線LANによる条件不利地域内ネットワーク構築技術の研究開発
  • C. コミュニティ・ブロードバンドを用いた地域内IP電話網の研究開発

これら各サブテーマは密接に関連している一方で,独立したものでもある. 例えば,自治体が各世帯を結ぶ地域内ネットワークを光ファイバなどにより 整備している,あるいは整備を予定している地域に対しては,Aの成果が寄 与できる.ブロードバンドサービスが提供されていない地域で,自治体が公 の施設を光ファイバにより結びブロードバンド化を実現している場合は,B により各世帯のブロードバンド化を実現できる.すでに地域内ネットワーク が整備されている地域に対しては,Cの成果を応用できる.もちろん,自治 体も通信事業者もブロードバンドの整備を行っていない条件不利地域に対し てはすべてのサブテーマが有効である.このように本研究は自治体や通信事 業者の取り組みを補完するものである.本研究により,地域コミュニティに よるブロードバンド整備・利活用モデルが構築され,地域住民が主体となっ た導入が容易かつ有用であることが示されれば,鹿児島県内の多くの離島や 山間部のブロードバンド化が実現できるものと考えている.