海上超長距離無線LANによるブロードバンド整備に関する研究
竹島プロジェクト / Project - TAKESHIMA -
目的
中継回線が存在せずブロードバンド整備に多額の費用が必要と考えられている離島において、本土との区間およそ50kmを無線LANで結び、低コストでブロードバンド整備を実現するために必要な技術的検証を行う。
研究実施地域
三島村竹島
協力
- 三島村
連携プロジェクト
島内の各世帯のブロードバンドサービス加入については、秋目プロジェクトの成果を、島内における地域ネットワークの整備は諏訪之瀬プロジェクトの成果を活用する。
進捗
- 2008年2月9日, 三島村と鹿児島大学学術情報基盤センター、無線LAN伝送距離の日本記録47.5kmを達成
Q&A
Q.竹島の現在のインターネット環境は?
一般世帯は、アナログダイアルアップ、もしくは、携帯電話(FOMAのみ)によるインターネット接続のみが可能です。
Q.特殊な装置を使うのですか?
A.いいえ。低コストでのブロードバンド整備を目指していますので市販製品を使います。無線LANブリッジは 日本無線JRL-710AL2 、アンテナは 日本無線NZA-666 を予定しています。すでに当該機器で海上区間47.5kmで通信が可能であることを実証済みです。
Q.無線局免許を取得しなくてもよいのですか?
A.使用する無線LANブリッジとアンテナは接続するケーブルも含めて、技術基準適合証明を受けています。このため、電波法設備規則第49条の20の規定により無線局免許は不要です。届出の必要もありません。
Q.雨が降ると通信できないのでは?
A.使用する周波数帯である 2.4GHz 帯の降雨減衰は、これまでに行われた多くの実験・研究の成果により、古くから測定できないくらい小さいことが示されており、雨や霧の影響はありません。雨の影響があるのは10GHzを超える衛星通信です。
Q.通信できているのに何を調べるのですか?
A.無線LAN通信を海上で行う場合、海面で反射した電波がわずかに遅れて到達することにより干渉する可能性があります(フェージング)。海が時化ている場合は乱反射するため海面反射の影響を考慮する必要はありませんが、凪の時の影響を検証する必要があります。もし、影響が大きいようならアンテナをある程度離して2台設置する、海面反射の影響を低減できる設置場所を工夫するなどの必要があります。
Q.海外では382kmの記録があるようですが?
A.アンテナを巨大なものにする、出力を上げる、などにより、2.4GHz帯無線LANでの数百キロの通信も技術的には可能です。しかし、国内では各種法令の制限により機器の出力および使用できるアンテナに制限があります。47.5km の記録は国内法に準拠した免許不要な機器で達成したものです。海外の記録を達成した機器・アンテナは国内では無線局免許を取得しないかぎり使用できません。海外の無線LAN製品には長距離通信が可能であることを歌っているものもありますが、国内で使用する場合には技術基準適合証明を取得する必要があり、そのまま国内に持ち込んでも使用できません。
Q.なぜ衛星を使わないのですか?
A.人工衛星を用いたインターネット接続には、雨が降ると切断される、遅延が大きくIP電話やテレビ会議には実用的に使用できない、ランニングコストが高額、などの問題があります。今後複数の衛星通信事業者の参入が予定されているため、ランニングコストについては改善される可能性はありますが、降雨減衰と遅延は技術的に回避が難しい問題です。特に遅延は回避が理論的に不可能です。無線LANにはこうした問題はありません。
Q.いつから竹島でブロードバンドが使えるようになるのですか?
A.2008年度に海上無線LAN区間の技術的検証を進め、実用的であるという判断ができれば、2009年度からこの仕組みを使ったブロードバンドサービスを竹島住民に対して提供する枠組みの検討を行います。検証に当たって島内の主要箇所や一般世帯なども接続しますので、実質的には2008年度中にはブロードバンド接続自体は実現されます。ただし、通信事業者が行うブロードバンドサービスではありませんので、2008年度中に竹島がブロードバンド・ゼロ地域でなくなるわけではありません。